
腸腰筋とは?主な役割と衰えによるリスクや健康維持の方法まで徹底解説
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腸腰筋は、身体を支えるインナーマッスルの一つであり、日常動作や姿勢の維持などに重要な役割がある筋肉です。
本記事では、腸腰筋の主な役割や筋力低下によって引き起こされるリスクを解説します。
腸腰筋とは健康的な生活を維持するために必要な筋肉
腸腰筋は、身体の奥深くにあるインナーマッスル(深層筋)であり、以下に挙げる3つの筋肉で構成されています。
腸腰筋 | 特徴・主な働き |
---|---|
大腰筋 | ・背骨と股関節の内側をつなぐ ・股関節の屈曲 |
小腰筋 | ・背骨と骨盤をつなぐ ・大腰筋や腸骨筋の動きのサポート |
腸骨筋 | ・骨盤の内側と股関節をつなぐ ・体幹の安定、姿勢の維持 |
腸腰筋は加齢による筋力低下を引き起こすリスクが高いと言われています。
80代では20代に比べて大腰筋の筋肉量が約50%に低下するという報告もあり、筋力の維持が欠かせません。
腸腰筋の役割は主に4つ
腸腰筋は、次の動作をする際に活用します。
- 股関節を曲げる
- 腰椎(腰の部分の背骨)を前側に曲げる
- 腰椎を左右に曲げる
上に記載した動作は、次に示す効果を発揮します。
- 歩行や階段の上り下りなどの日常動作に役立つ
- 姿勢やスタイルなど美しい見た目を保つ
- 身体のバランス感覚を担う体幹を安定させる
- 排便のコントロールや腸内ガスの排出を助ける
順番に確認していきましょう。
1.歩行や階段の上り下りなどの日常動作に役立つ
腸腰筋は、日常生活の動作に役立つ筋肉です。
先述したように、腸腰筋は股関節を曲げる(太ももを持ち上げる)ときに活用され、以下の動作で使われる場合が多いと言われています。
- 歩行
- 階段や坂の上り下り
- 浴槽をまたぐ動作
- 椅子から立ち上がる行為
歩行能力が低下して歩く機会が減少すると、腸腰筋の衰えにつながり、さらなる歩行能力の悪化の原因となります。
腸腰筋は、日常生活を過ごすうえで必要な筋肉と言えるでしょう。
2.姿勢やスタイルなど美しい見た目を保つ
腸腰筋は、姿勢やスタイルなどの見た目の維持に関係します。
筋力が低下すると、骨盤や腰の骨が、正常な状態に比べてお腹側や背中側に倒れた状態となります。
正常な位置から骨盤や腰の骨がずれると、猫背や反り腰の要因になることも珍しくありません。
猫背は姿勢の悪化につながり、反り腰は腹部が前に突き出た姿勢となるため、お腹がぽっこりと出ているように見えてしまいがちです。
美しい見た目を保つには、腸腰筋の筋力を保ち、骨盤や腰の骨を正しい位置に留めることが重要です。
3.体のバランス感覚を担う体幹を安定させる
腸腰筋は、体幹(両腕や両脚、頭部以外の胴体にあたる部位)を安定させ、バランス感覚をとる役割もあります。
腸腰筋がバランス感覚で重要な理由は、はっきりとはわかっていません。
一説には、腸腰筋が身体の重心に近い部位にあり、バランス感覚の安定が期待できるためだと考えられています。
とくに高齢者のバランス感覚は、腸腰筋の筋力と深く関係するという報告もあります。
バランス感覚の低下による転倒を防ぐためにも腸腰筋を鍛えると良いでしょう。
4.排便のコントロールや腸内ガスの排出を助ける
腸腰筋は、排便をサポートする働きがあります。
具体的には、排便のコントロール、腸のぜん動運動の活発化によるガスや便の排出促進などが期待できます。
便秘は腸内環境を悪化させる要因の一つであり、人口の約10~15%が患っている国民病と言えるでしょう。
便秘の主な原因や便秘改善が期待できる方法を以下にまとめました。
便秘の主な原因 | ・自律神経の乱れ ・不規則な排便習慣 ・無理なダイエット ・偏った食生活 |
便秘改善が期待できる代表的な方法 | ・食物繊維や水分、善玉菌(有用菌)が多く含まれる食材を食事に取り入れる ・適度な運動に取り組む ・趣味に打ち込み、ストレスを軽減させる ・十分な睡眠を確保する |
腸腰筋の筋力維持は、排便をサポートし腸内環境の改善も期待できます。
関連記事:便秘の解消法は?腸内環境を改善する食べ物やマッサージを解説
腸腰筋の衰えによるリスク
腸腰筋の筋力が低下すると、次のような健康状態の悪化を引き起こすかもしれません。
- 腰のカーブの変形により腰痛や反り腰を悪化させる
- 脂肪の付着によるメタボリックシンドロームを引き起こす
- 血流の停滞による冷え性やむくみをきたす
- 転倒による骨折のリスクを高める
それぞれ確認しておきましょう。
腰のカーブの変形により腰痛や反り腰を悪化させる
腸腰筋が硬くなって上手に筋肉を使えなくなったり、筋力低下を引き起こしたりすると、腰のカーブが変形して腰痛や反り腰を悪化させるかもしれません。
とくにお腹側にカーブの曲がりが強まった状態は、腰椎すべり症を引き起こすリスクが高まるため、悪化に注意が必要です。
腰椎すべり症になると、腰の骨が前後にずれて脊髄の圧迫を引き起こし、腰や下肢の痛み、しびれなどが現れます。
腰のカーブの変形を防ぐには、ストレッチが重要です。
決して無理はせず、腸腰筋を動かすと良いでしょう。
脂肪の付着によるメタボリックシンドロームを引き起こす
腸腰筋の衰えは、メタボリックシンドロームを引き起こす原因の一つです。
腸腰筋の筋力低下は、主に以下の理由でメタボリックシンドロームをきたすと考えられています。
- 腸腰筋が衰えると、運動不足になるため
- 血糖値が高くなりやすい
腸腰筋の筋力低下により、筋肉への糖の取り込みが低下し、血糖値が上昇しやすくなります。
その結果、膵臓から分泌されたインスリン(血糖値を一定に保つホルモン)の作用が十分に発揮されにくくなります。
血糖値の高い状態が続くと、血糖値を下げるためにインスリンの分泌が促されます。しかし、過剰なインスリン分泌が、余分な糖が脂肪細胞へ取り込まれ、肥満を引き起こすのです。
また、腸腰筋の衰えは、腰痛を生じるリスク因子です。
腰痛を発症すると、動く意欲の低下につながり運動不足に陥る可能性があるため、メタボリックシンドロームを引き起こしやすくなります。
血流の停滞による冷え性やむくみをきたす
冷え性やむくみの症状は、筋肉量の低下が原因かもしれません。
冷え性は、基礎代謝量や筋肉量の低下によって身体が熱を生み出しにくくなっていることが関係していると言われています。
一説には、身体がつくる熱量の少なさが末梢血管を収縮させ、末梢の血流量や皮膚温度の低下の要因と考えられています。
なかでもBMI(※1)が20以下の痩せ型の女性では、筋肉量の低下により冷え性を発症するケースが珍しくありません。
(※1)BMI:「肥満」や「やせ」などの体格の指標に用いられる指数。[体重(kg)]÷[身長(m)の二乗]で求められる。18.5以上25.0未満は普通体重、18.5未満は低体重(やせ)、25.0以上は肥満。
転倒による骨折のリスクを高める
腸腰筋の筋力低下は、骨折の一つの要因です。
腸腰筋が衰えると、太ももが十分に上がらず段差でのつまずきや転倒の原因となり、骨折のリスクが高まります。
一般的に全身の筋肉量は、40歳以降から少しずつ減少すると言われており、加齢にともないサルコペニア(※2)を発症しやすくなるのです。
サルコペニアを発症すると、日常動作が難しくなるだけではなく、がん患者の生存率の低下や手術後の死亡リスクも高まることがわかっています。
サルコペニアの予防には、日常動作で使われやすい腸腰筋の筋トレが効果的です。
筋トレに取り組み、筋力を維持しましょう。
(※2)サルコペニア:高齢にともなって、筋肉量や筋力、身体機能が低下する状態。放置すると歩行困難になり、高齢者の活動能力が低下する要因になる。
腸腰筋の筋トレやストレッチに取り組み健康を維持しよう
腸腰筋は、歩行や階段の上り下りなどの日常動作や、スタイルの維持などさまざまな役割があります。
筋力の低下は、腰痛の悪化やメタボリックシンドロームなどの原因となる場合もあるため、筋トレによる腸腰筋の維持が重要です。
腸腰筋を鍛えると、腰痛予防や便秘解消などの効果が期待できます。ぜひ、腸腰筋の筋トレやストレッチに取り組んでみてください。